「対策されても点を取って勝つ!」いまだ進化を続ける昌平、唯一無二の目標である“全国初制覇”へ視界は良好【選手権】
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写真:田中研治


先制後、危なげなく1-0で勝ち切る


第101回全国高校サッカー選手権埼玉大会は11月13日、NACK5スタジアムで昌平と成徳深谷による初顔合わせの決勝が行なわれ、昌平が1-0で勝って2年ぶり5度目の優勝を飾った。私立校で5度の選手権出場は、埼玉では武南の最多14度に次ぐ記録となった。両校は6月の全国高校総体(インターハイ)予選決勝でも対戦し、昌平が2-1で勝っている。

U-16日本代表の右SB上原悠都(1年)を怪我で欠くなど、本来の陣容から2人を入れ替えた昌平だが、力強いドリブルと速くて正確なパスを組み合わせて敵陣に進出。序盤から両外と中央を厳しく攻め立て、惜しいシュートを何本も放った。

左MFで起用された今大会初出場の大谷湊斗(1年)が前半7分、ボランチの土谷飛雅(2年)が前半9分と11分、決勝ではボランチを担当した長準喜(2年)が前半27分、いずれも決定的なシュートを放ったが、すべて素早く身体を寄せた相手DFにブロックされてしまう。36分、来季のFC東京加入が内定している右MF荒井悠汰(3年)の右クロスを鄭志錫(1年)が頭で合わせたが、わずかにバーの上を通過。39分の荒井の一撃もバーを直撃した。

後半10分には大谷のシュートがブロックされ、跳ね返ったボールを土谷が狙ったが、これもわずかに左へ抜けていくなど、優位に立ちながらもなかなかゴールを割れないでいた。

そんなこう着状態だった17分、左SB武村圭悟(3年)の左クロスはクリアされたが、こぼれ球を抜け目なく拾った大谷がマーカーを切り返しでかわして左足シュート。相手DFに当たってゴールに吸い込まれ、これが決勝点となった。
 

スタジアムに到着してから先発を告げられたという大谷は、「めちゃくちゃ緊張しましたが、得点できて嬉しかった。ドリブルで仕掛けるのが自分の強み。全国大会では東山(京都)と戦いたい」と兄・彩斗のいる強豪との対戦を望む。現在暫定首位の埼玉県S1リーグでは、セカンドチームの主力として活躍中だ。

ここまでGK木村航大、CB増子颯竜(ともに3年)らを中心とする堅陣で初の決勝に駆け上がった成徳深谷は、木村の好守や鋭い出足のシュートブロックなど持ち味を存分に発揮。しかしロングスローを含む得意のセットプレーの機会が少なく、CKが3本で好位置からのFKも1度だけだった。就任20年目の為谷洋介監督は「CKやスローインにさせてもらえず、準備してきたセットプレーを出し切れなかった」と攻め手を欠いたことを敗因に挙げた。


決勝点を奪った後の昌平は、加点する絶好機こそ作れなかったが、メンバーをひとりも代えずに1-0で逃げ切った。

「相手によって変化をつけながら戦えるようになった」

藤島崇之監督は「相手によって変化をつけながら戦えるようになった。今日はボールをしっかり運ぶ戦略を考えていたので、長が対応できると思ってボランチで使った」と説明。昨年はインターハイ、選手権とも出場できなかったが「セットプレーでも、守備の背後を取ってからも、クロスからでも得点できるのが今年の良さ。夏はあと一歩の悔しさを3度も味わっているので、うちの特色を出しながら攻撃の質を上げて日本一を目ざしたい」と述べ、準決勝で敗れた今夏のインターハイの無念を選手権で晴らす覚悟を示した。

2年前の選手権、高川学園(山口)との1回戦でゴールを決めたトップ下の篠田翼(3年)は、「昌平対策を取ってくる相手でも、点を取って勝つ試合が増えたのが去年と違うところ。インターハイのベスト4はすごく悔しかったので、選手権はチームの歴史を変える日本一になりたい」と誓った。
 

埼玉栄との準決勝の前半終了間際に左足内側じん帯を痛めた荒井は、テープをぐるぐる巻きにして出場した。この1週間は練習にほとんど参加できなかったそうで、「相手の強みであるセットプレーを与えず、(ロングスローを回避するため)前にクリアすることを意識した」と戦略の一端を説明した。

選手権に向けては「今年は自分が毎試合点を取ってチームを勝たせることが目標。松木(玖生)さんも優勝してFC東京に入ったので、自分もしっかり結果を残してプロに進みたい」と、プリンスリーグ関東で首位の10点をマークしている大黒柱は、ゆったりとした語り口の中にもたぎる闘争心をのぞかせた。

取材・文●河野 正
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