ミーティングで厳しい言葉「なんだ、今日の練習の雰囲気は。そんなのでいいのか?」徳永涼が貫いたキャプテンシーで、急造チームは一気にまとまった
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日本高校選抜でも腕章を巻いた徳永。デンチャレ最終戦では2得点に絡み、歴史的勝利に導いた。写真:安藤隆人


Jクラブのオファーを断り筑波大に進学


2月21日から3月4日まで開催されたデンソーカップチャレンジ茨城大会において、3年前から参加している日本高校選抜が、関東選抜Bとの最終戦を2-1で制し、大会初勝利を手にした。

このチームの中心にいたのが、ボランチの徳永涼だ。名門・前橋育英でも攻守の要であり、キャプテンとして精神的支柱でもあった彼は、日本高校選抜においても仲村浩二監督から真っ先にキャプテンに任命されていた。

Jリーグの複数クラブからの正式オファーを断って筑波大に進学する徳永は、視野の広さと頭の回転の速さを駆使したパス出し、鋭い読みと出足の速さを活かした高いボール奪取を誇る。

この能力だけでもJクラブのスカウトをはじめ、周りから高い評価を得ているのだが、その存在を絶対的なものにしているのが、キャプテンシーだ。

プレー中と同じで常に練習からチームメイトの表情や行動に目をやり、サッカーに対する意欲や集中力が欠けている行動があれば、鋭く指摘する。

ピッチ内でも仲間を鼓舞する声や、危険な場所をすぐに察知して声でコントロールしたり、連係ミスや判断のズレがあればすぐに話し合いをしたりと、個々の力をつなぎ合わせてチームを戦う集団にする能力が非常に高い。だからこそ、仲村監督も迷うことなく徳永にチームを託した。

今大会に臨む前、チームとしての初めての大舞台で、徳永はさっそくその才を発揮していた。2月11日にFUJIFILM SUPER CUP 2023の前座試合として行なわれた、横浜F・マリノスユースとのネクストジェネレーションマッチ。試合前日に徳永は全体ミーティングを開いて、仲間の前で厳しい言葉を放った。

「チームになっていないぞ。なんだ、今日の練習の雰囲気は。そんなのでいいのか?」

静岡県で行なわれた事前合宿の練習試合などで、レギュラー組とサブ組が少しはっきりし出した時に、レギュラー組の気持ちが緩んでいることに徳永は気がついた。

「僕らは急造チームだからこそ、それぞれが言いたいことを言えなくなる場面が増えると思うんです。何か違うなとか、こうしたほうがいいなと思っていても、それが声に出せなくなると、どんどん意思疎通が難しくなって、チーム全体の雰囲気が悪くなったり、試合でそれが脆さとなって出てしまう。僕がキャプテンを任された以上は、このチームが決してそうならないように、いろんな選手に積極的に話しかけて、言いにくいこともはっきりと言おうと思っていた」

卒業式を見送って臨んだ一戦で一発レッド

キャプテンとしての自覚と覚悟をすでに持っていた徳永は、チームに生まれた隙を見逃さなかった。重要な試合の前に言いにくいことをはっきりと言う。この言葉に選手たちの意識がグッと高まった。

試合前のアップは徳永の目から見ても、全員が気持ちを込めて取り組んでいた。試合は2-2の引き分けで勝利することはできなかったが、「すぐに全員がデンソーカップチャレンジに向けて、気を引き締めることができた」と、徳永を中心に急造チームは一気にまとまっていった。

迎えた今大会、徳永は初戦の関東選抜A戦(1-3)でボランチとして攻守の切り替えの速さや、守備強度とパスセンスを駆使して存在感を放った。しかし、卒業式参加を見送ってまでチームに残ってスタメン出場した第2戦の東海選抜戦では、1-2で迎えた68分に相手を背後から倒してしまい、一発レッドカード。第3戦のプレーオフ選抜戦は出場停止となり、チームが3連敗を喫するところを見つめることしかできなかった。

「本当にチームに迷惑をかけました。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

だが、このレッドカードも、ボールを奪われてしまった自分のミスを取り返すために激しく守備に戻った結果だった。そのことを周りも理解しており、最終戦では再び徳永はキャプテンマークを巻いてスタメン出場。徳永のボール奪取とパスを信じて周りが動き、日本高校選抜が挙げた2ゴールの起点となる活躍を見せ、チームを歴史的勝利に導いた。

「今大会はみんな思っていることを口にしながら、チームとしてまとまることができたと思う。プレー面でも例えばFW塩貝健人の裏への動きを見逃さないようにするなど、チームとしての共通意識も持つことができたのは大きなプラスだと思います」

日本高校選抜の精神的支柱たる所以を見せつけた徳永。ただ、1つだけ悔しさが残る出来事があった。それは小学校時代から憧れの選手として口にしていた中村憲剛の前でプレーできなかったことだ。

「次こそはプレーを見てもらえるように」

昨年のプレミアリーグEASTのアウェー川崎フロンターレU-18戦では、中村が視察に訪れていたが、徳永は累積警告で出場できなかった。

「デンチャレのメンバーリストを見て、プレーオフ選抜のコーチに中村憲剛さんがいることを知ってから、ずっとプレーオフ選抜との試合を楽しみにしていた」が、前述した通り、この試合も出場停止。

「プレーを見てもらいたいのに、本当に悔しい」と最後までこぼしていた徳永だったが、関東選抜B戦後に、ついに憧れの人物にバッタリと遭遇し、そこで「知っているよ。プレーを見たいけど、なかなか見られないよね。でも、これからも注目しているから、大学サッカーでの対戦(中村は中央大サッカー部のコーチでもある)を楽しみにしているよ」と声をかけられた。

「憧れの憲剛さんが僕のことを認知してくれていただけでも嬉しい。次こそはプレーを見てもらえるように、その時に今よりも、もっと成長できているように頑張りたい。筑波大に貢献できるように努力することはもちろん、日本高校選抜を最後まで責任を持って引っ張っていくこともやり切りたいと思います」

稀有なキャプテンシーと憧れの存在に目を輝かせる純粋な向上心を持ち合わせた徳永は、これからも力強く前に向かって走っていく。周りの期待と信頼を一身に背負って。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)


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