国立で弾けた晴れやかな笑顔。青森山田MF松木玖生が最高の仲間と目にした日本一の景色
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青森山田高MF松木玖生主将は大津高MF森田大智主将と笑顔のグータッチ(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

 

[1.10 選手権決勝 大津高 0-4 青森山田高 国立]

 

 どれだけ追い掛けても、その笑顔はこちらを向いてくれなかった。交代を命じられたベンチで、PKを外した先輩を抱きかかえたピッチで、涙を流すことしかできなかった。自分自身の運命を責め続けたことも、一度や二度ではない。

 

 それでも、諦めなかった。厳しくも、温かく指導してくれたスタッフのため。12歳の自分を、快く北海道から青森の地へと送り出してくれた家族のため。何より、ずっと一緒に夢を追い掛け続けてきた仲間のため。「選手権で日本一に」。その一念で、晴れの日も、雨の日も、雪の日だって、自分とサッカーボールと向き合い続けてきた。

 

「『このチームでやれて良かったな』って。それが率直に思ったことで、沼田(晃季)がボールを蹴って、審判が口に笛をくわえた時に、もう嬉しさのあまり先にガッツポーズをするくらい嬉しかったですね(笑)。やっぱり優勝しないと意味がないと思って、この大会は決勝まで本当にあまり笑顔を見せないようにしていたので、最後に優勝して終われて嬉しいです」。

 

 タイムアップの瞬間。その表情に浮かんだのは、1年間で最も晴れやかな笑顔。気まぐれな“選手権の女神”は、最後の最後で青森山田高不動のキャプテン、MF松木玖生(3年=青森山田中出身)に微笑み掛けた。

 

 中学1年生から時間を重ねてきた、青森山田で過ごす最後の1年。キャプテンになった松木が一貫して言い続けてきたのは、「チームに一番貢献する」こと。攻撃でも、守備でも、自分がチームに一番貢献する。それが勝利を引き寄せるための最低条件であり、唯一の条件だと信じ、自分に限界を設けず、できることはすべてやる覚悟を定めた。

 

 普段は先頭に立ってはしゃぐタイプ。いわゆる“天然”的な要素も持ち合わせている。「自分ではそうでもないと思い込んでいるんですけど、『オマエ、抜けてるな』とは言われます。言い間違えとか多いです。メッチャ仲が良いヤツだと、もうスルーされますね。『ああ、またか』みたいな(笑)」。気の置けない仲間とピッチ外で共有する時間も、大切にしてきたことは言うまでもない。

 

 一度ピッチ内に入ると、その表情は一変する。自分にも、チームメイトにも、一切の妥協は許さない。だが、今年のチームにはしっかりと意見を主張できる選手が揃っていた。副キャプテンのMF宇野禅斗(3年)とMF藤森颯太(3年)、ディフェンスリーダーのDF三輪椋平(3年)を中心に、違うと思ったことはハッキリと松木にも進言する。そんな仲間の姿を、誰よりも松木は頼もしく感じていた。

 

 もちろんその絆を結んでいるのは、試合に出ている選手だけではない。「この代の絆は間違いなく例年以上に深いものがあったと思っていて、インターハイの時もそうですけど、青森に残って応援してくれるヤツらが応援メッセージを毎試合くれていたりとか、今回も決勝の前に応援メッセージをくれたりとか、そういう団結というところは、自分が今まで見てきた中で一番強かったですね」。3年間を通じて、そういうグループになれたことが、キャプテンにとっては何よりも一番嬉しかった。

 

 だからこそ、必要だったのは選手権でのタイトル。準優勝と準優勝を味わった、2回の悔恨。青森山田高校での3年間で、唯一獲れていなかったと同時に、最も望んだ“結果”を最高の仲間とともに、最後の最後に引き寄せるため、この1年を全速力で駆け抜けてきた。

 

 泣くつもりはなかったという。とうとう選手権での日本一へと辿り着いた決勝の試合後。松木の視線は、ある人の姿を捉える。「自分でも泣くつもりはなかったんですけど、若松(佑弥)トレーナーと最後にハグをした時に、自分に6年間関わってきてくれた方なので、それはもうウルッとくるものがありましたね」。苦しい時も、辛い時も、そっと寄り添ってくれた恩人の笑顔を目にすると、青森山田で過ごした時間が、一気に脳裏へ甦ってくる。そっと涙をぬぐい、臨んだ表彰式では、また最高の笑顔が弾けた。

 

 最後の選手権を間近に控えた12月。松木はこう語っていた。「子供たちからの人気がやっぱり一番嬉しいですね。今のコロナ禍の中で、凄く難しい状況ではありますけど、お客さんが入ってくれたら、もちろん今まで出しているパフォーマンス以上に上がることもありますし、そこは本当にお客さんの力、ファン・サポーターの力は凄く大切だなと思います」。

 

 ヒーローインタビューで子供たちへのメッセージを求められた松木は、晴れやかな顔で言葉を紡ぐ。「これからもサッカーを楽しんでいきましょう!」。そう言い切り、一礼を終えてスタンドに手を振ったその表情は、誰よりもサッカーを楽しんでいる少年のような笑顔だった。

 

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