群馬ライバル対決で放った10番の輝き! 前橋育英の左のエースが魅せた決勝アシストの凄み
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短時間のうちに、実に判断を3度も変えてゴールを演出。2年ぶりの選手権出場を引き寄せる

 

 

 今年に入って急成長を遂げた左のエースが重要な一戦で大仕事をやってのけた。

 

 選手権群馬県予選決勝、2年ぶり24回目の選手権出場を目指す前橋育英は、同じプリンスリーグ関東に所属し、そこでも上位争いを繰り広げる最大のライバル、桐生一との大一番を迎えた。戦前の予想は全くの五分。インターハイ予選は前橋育英が辛勝を収めており、桐生一はリベンジへの想いを胸に、この一戦に臨んできた

 

「1点差のゲームになると思っていた」と前橋育英・山田耕介監督が語ったように、試合は立ち上がりから双方がチャンスを作り出し、かつ中盤での激しい潰し合いを展開するハイレベルなゲームとなった。

 

 両チームともに局面でショートパスとミドルパスを駆使したハイテンポな崩しを見せるが、それを最終ラインとボランチが鋭い読みと寄せで凌ぎ、マイボールにするとビルドアップをしてボールを前に運んでいく。内容も濃く、まさに決戦にふさわしい試合は、スコアレスのまま時間が経過していった。

 

 試合が動いたのは後半13分、前橋育英はカウンターを仕掛けると、この試合は左ワイドに張ることが多かったMF笠柳翼が中に絞りながら動き出した。

 

 そこにプロ注目の2年生ボランチ徳永涼から浮き球のパスが届くと、ボールを受ける前に笠柳は一度首を振って周りの状況を把握した。

 

「最初はワンタッチで斜め前を走っていた(FW守屋)練太郎に渡そうと思ったのですが、僕のマークの相手の右サイドバックが遅れてきていたので、不正確になってしまうかもしれないワンタッチより、ここはボールを収める時間があるので、きちんと次のプレーがしやすい足もとに置こうと判断した」

 

 笠柳は相手のCBのギャップを狙っている守屋の動きを視野に入れながらも、バウンド側を右足アウトフロントでトラップをして収めると、次の瞬間に状況が動いたことに気づいた。

 

「このままドリブルで打ち抜いていこうかなとも思ったのですが、もう一度前を見たら練太郎に対して、相手の左CBの3番が中に絞り切れていなくて、遅れて練太郎とボールの間に入ろうとしているのが見えたんです。最初は練太郎に対して浮き球のボールを送ろうと思っていたのですが、そうなると最悪3番に追いつかれてしまう危険性があったので、練太郎の足元もしくは、彼の前を少しでも横切るような強いボールを出せば、3番は完全に練太郎の背中を見てプレーしないといけなくなるので、これならあいつが完全に相手DFの前に出て抜け出してくれると思った」

 

 短時間のうちに、実に判断を3度も変えて、最後は最良の選択肢を選んだ。スリータッチ目に笠柳の右インサイドから放たれたスルーパスに守屋が抜け出し、飛び出してきたGKを冷静に見極めて、ダイレクトでゴール左隅に突き刺した。

 

来季のV・ファーレン長崎加入内定も昨年はレギュラーを掴めず…急成長の理由は?

 

 このゴールで勝負は決した。得点シーン以外にも得意のドリブルで左から仕掛けたり、素早い攻守の切り替えで相手のウイングにプレスをかけたりと、攻守において存在感を放った背番号10は、チームに大きな勝利を呼び込んだ。

「最近は本当に結果にこだわるようになってきました。ゴールやアシストで試合を決められる選手は僕の中で本当に大事だと思うので意識をしています」

 

 笠柳は卒業後にJ2のV・ファーレン長崎への加入が内定している。昨年はレギュラーを掴み取れず、いつも交代の一番手の存在だった。アピールするチャンスはもらえるが、スタメンで使ってもらえるほど周りの信頼を得ていない。そう感じた彼はゴールとアシストという結果にこだわって、自分の武器であるドリブルと状況判断能力を徹底して磨いた。これまではボールに意識がいってしまい、判断の見切りの早いプレーをしてしまっていたが、より相手を見てその状況に適した選択肢を持ち、判断を変えながらプレーができるようになった。

 

 念願のプロ入りが決まったことでその意識はさらに増し、この大一番でピッチ上にいる誰よりも冷静で、的確な判断をして、桐生一の堅い守りをこじ開けた。

 

「より周りを見てプレーすることで、信頼関係というか、判断の共有ができるようになった。これは去年の僕には決定的に足りなかったことだし、だからあの立場を抜け出せなかったのだと思う」

 

 急成長の1年は彼にとって多くのものをもたらした。この先、前橋育英はプリンス関東の残り、その先にある悲願のプレミアリーグ初昇格をかけた参入戦、そして100回を迎える選手権と重要な試合が目白押しだ。これまで培ってきたものをチームに還元し、さらに成長の階段を登るべく、笠柳の真価はこれからさらに発揮されることになるだろう。

 

取材・文●安藤隆人

 

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